随意随想
「暑い夏を楽しく過ごす そして、節電も…」
大阪市立大学非常勤講師 竹村 安子
使用電力15パーセントの節電を、関西電力と大阪府・大阪市などの行政が盛んにキャンペーンしている。
我が家でも何とか節電しなければと、使用しない電気器具をコンセントから外したり、こまめに電灯を消したり、昼間はテレビをつけないようにしたりと、できるだけの節電に取り組んでいる。しかし、これからどれだけ節電できるだろうかと心配している。我が家には、あと1か月経つと90歳を迎える、要介護4の母がいる。昨年も、一昨年も、数年前から、母の部屋は朝からずーっと一日中、クーラーを使用して冷房しているのである。
母は、私たちが「よい気候だ」と思うような時に「寒い、寒い…」と言い、まだ我慢できる暑さの時には「暑い、暑い…」と言う。そのため、母の部屋は初冬から春先までオイルヒーターをずーっと使用し、初夏から初秋にかけてはクーラーが動いているという状況なのである。デイサービスに行っている日以外は、今年も同じようにクーラーを使うことになるだろう…。高齢者のいる家庭にとって、節電はなかなか難しい頭の痛いことである。暑い夏を我慢していると、熱中症にもなりかねないし…。
「どうすれば良いのか?」、キャンペーンの中で、自宅でクーラーを使うより、昼間は冷房している図書館や集会所、スーパーマーケットなどへ行き、使用電気を減らそうということが言われている。
自宅の最寄り駅の近くに、スーパーマーケットがあり、そこの休憩所のベンチにはいつも多くの人たちが集っている。これは夏・冬だけでなく、一年中そうである。中には常連の人たち(多くは高齢者)がいて、そこで楽しく、お茶を飲みながらおしゃべりしている。自分の最近の様子や身体の調子、家族の話、時には医者や商店、食物、近隣者のことまで、品定めだなぁーと思うような話までしている。たまたま隣に座ると話しかけられて、家族の話や健康法など、いろいろ聞かせていただくこともある。
この風景は、どこかで見たことがある、体験したこともあると思い出していくと、それはまだ私が幼かった頃や小学校2〜3年生の子供だった頃の、近所の風景だった。お年寄りがどこかの家で集まってお茶を飲みながらおしゃべりしていたなぁー、また、お母さん同士がどこかで井戸端会議をしていたなぁー、子供たちもどこかの家に集まって遊びおやつをもらっていたなぁーという風景が思い出されてくる。
現在の社会は「無縁社会」と言われ、人と人とのつながりが希薄になってきている。自分の家に近所の人を招くということもなくなった。しかし、一方で、私たちは人とのつながりを求めているのではないだろうか…。
いま、大阪市内では地域集会所で「喫茶サロン」が開かれているところが多い。しかしそれだけではなく、いろいろなところに「サロン」「居場所」があればと思う。老人憩いの家や集会所がいつでも利用できたら…、社会福祉施設やNPO、事業者、空き店舗、空き家などの地域の中にある資源を活用できたら、もっと人と人とのつながりが豊かになってくるだろうと思う。
その中で特に一番のお勧めは、「住み開き」だろう。これは、自分の住んでいる家を「居場所」「場」として提供する活動である。大阪市内でもこの活動を始めている人をちらほらと見かけるようになってきた。
これを、老人クラブで取り組んだらいいだろうなぁーと思う。
単位老人クラブの中で、「自宅を貸してもいいですよ」というメンバーを募り(門構えの立派な家よりも、昔の風情を残す長屋などが最適で、自身の生活感に近い環境の方が良い!)、月に1〜2回貸していただく、数人が貸してくださると、その単位クラブの中にサロンが数多く生まれてくるということになる。
そして、おしゃべりする中で、お互いに相手の生活に思いを馳せて、支えあおうという気持ちも育ってくるのではないかと思う。そして節電にもつながっていく…。
活動の日は、老人クラブのメンバーがその準備から後片付けをして、家を貸してくださる方の負担にならないようにする。会費は100円か150円ぐらいにして、お茶やコーヒーなどとお菓子を用意しておく。参加者は「お客様」ではなく、できることをそこでやっていく。
こんなことができたら、暑い夏も楽しく過ごせるのではないかと思っているのですが、どうでしょうか…。