随意随想

「高齢期につれづれに想うこと…」

大阪市立大学非常勤講師 竹村 安子

姉も私も、二・三年前から膝・腰が痛くなり、変形性膝関節症の中期と診断された。ヒアルロンサン等の注射をしてはと言われているが、その注射が痛いと聞き、怖くて、まだ整形外科には通っていない。v

そのような状態なので、大掛かりな掃除や片付けは、なかなか「やる気」にならない。そろそろ、ベランダの大掃除をしなければと思うのだが、なかなか身体も気も動かない。ベランダ掃除のために高圧洗浄機も買ったのだが…。

こんな私が住んでいる区で、有償による助け合い事業が始まっている。1時間800円、30分400円で高齢者の困りごとに対応してくれるとのこと。今年は、そこにお願いしようかと思っているが、家の中の整理が十分でないので、他人に家に入ってもらうのが恥ずかしい。もうちょっと整理してから依頼しようと、姉と話している。

そんなことを話している時に、テレビを見ると、高齢者の「ゴミ屋敷」に近隣が困って、行政に撤去を依頼しているが、高齢者がなかなか応じてくれないというニュースがとびこんできた。それを見ながら、ここまでひどくはないが、高齢になってきて、身体も気も「やる気」がでず、整理や掃除がおっくうになってきて、また、必要ない物でも、まだ使用できる物を捨てるのはもったいなくてなかなかできない、自分自身と照らし合わせて、納得するものがある。

有償活動の事業者のコーディネーターに、このような依頼はあるかと聞いてみると、依頼された後で、断ってくる方が多いと聞いた。やらなければと思っていても、なかなか始めにくいということを実感させられているが、これからのために、「断捨離」を少しずつやっていかなければと思っている。

また、話の中で、定期的に話し相手に来て欲しいという依頼やマンション住まいの方からの依頼があると聞いた。

私の住んでいる区は、近年、マンション、特に高層マンションが多く建ち、人口が増加している。その結果、小学校・中学校は満員状態で、保育所の待機児童は大阪市の中でもワースト1・2位という状況である。

また、働き手世代だけなく、中高年者が多く移り住むようになってきた。JR・私鉄・地下鉄あわせて8駅があって、梅田・難波・天王寺と、どこに行くにも交通の便がよく、区役所・銀行・商店街・スーパーマーケットなど、身近に行政機関や生活施設等があって便利である。その上、近年のマンションはバリアフリー仕様、オートロックで、高齢者にとっては、安心して暮らしやすいということから、近郊から引っ越してこられるという。それらの人たちは、高齢でおっくうになってきていて、また、子どもを通じてのつながりもなく、近隣の人たちや環境にうまく馴染んでいけているのだろうか。

私が住んでいるところは、神社の夏まつりが盛んで、各町からお神輿・だんじり・鉾・神輿太鼓等などがくりだし、にぎやかである。それに続いて盆踊りがあり、餅つきや今はあまり実施されていない地域運動会を実施している地域もある。老人クラブでもいろいろな活動を実施し、福祉活動では、高齢者の食事サービスや喫茶サロン、子育てサロンも実施している、地域活動の活発なところである。

しかし、それらに参加も見にくることもしない人たちが増えている。有償活動がそれらの人たちを、地域参加につなぐツールとなって欲しいと思う。

昨年、マンションの集会所で喫茶サロンを週1回立ち上げたところがある。そのマンションは40年近く前に建ち、その当時は、若年者や、子育て世代が中心であったのが、現在は、高年者が多く住むようになった。高齢者だけや一人で暮らす高齢者世帯も多いという。喫茶サロンでマンション内の人たちの交流が進んでいって欲しい、うつ病・認知症になる人が少しでも減って欲しい、なによりも楽しく活き活きと過ごして欲しいと、管理組合のリーダーたちは願っている。今、そのマンションで、有償サービス(1時間200円か300円)の実施が計画されている。

これからは一人ひとり、自らがどのように暮らしていくのかを考えなければならないと思う。そして、それと共に、連合町会(地区社会福祉協議会)というエリアだけでなく、1〜2町会、1マンションなどというような、もっと狭いエリアでのきめ細かな取り組みが大切になってくるだろう。

そして、その活動を最初にリードしていくのは、その課題に向き合っている高齢者自身ではないかと思う。

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