随意随想

「奇跡の自己治癒力を引き出す」

NPO法人JMCA理事長 羽間 鋭雄

ここ一月足らずの間に、大好きで、大切な友人A君が余命1年を宣告され、また、ともに健康づくりの啓発活動に熱心に取り組んできた同士のB君を失くしました。どちらも70歳でガンが原因です。しかし、この二人の生活習慣は、健康の観点からは、まるで正反対といえるようなものでした。飲食店やスナックを経営していたA君は、毎日のように夜中まで飲み食いし、ほとんど眠らないでも元気にゴルフをするという、ちょっと食べ過ぎたり寝不足するだけで体調を崩す私から見れば、まるで超人のように思える人でした。一方のB君は、西式健康法を確立した西勝造氏に師事した父上のあとを継いで、ひたすら健康づくりの啓発活動一筋に勤めてこられた人です。

突然相次いだこの出来事に、私は大変なショックを受けていますが、また改めて、健康や病気や死について深く考えさせられています

今回に限ったことではなく、人一倍健康に気を付けて生活している人が意外な病気で亡くなったり、不健康極まりない生活をしていながら元気で長生きしている人を見る度に、その不公平さを空しく思うとともに、健康や病気に対する資質の影響の大きさを否応なしに知らしめられてきました。しかし、確かなことは、不健康な生活をしていても元気な人は、いろいろな体に対する負担に抗する素晴しい資質を持っているということであり、不健康な生活をしていることによって元気であるという筈はありません。不健康な生活を正せば、もっと元気で健康になるに違いないし、いずれ不健康から来る負担に耐え切れなくなることも確かです。

不健康な生活習慣を変えることがなかなか難しいのは、この健康資質の個人差が大きく、害を受け難い人がいることと、病気の、特にガンの発症については、ほとんどの場合、これといった確実な原因が不明であることなどのために、危険を感じることなく過ごしてしまうからだろうと思われます。

また、日々耳目を賑わす健康情報に惑わされることも少なくありません。食事は、「朝、昼、晩規則正しく」という常識に反して「1日1食」や「1日5食」説があり、適度の運動は不可欠なはずが「運動すると長生きできない」、「体温が低いと免疫力が落ちる」「体温が低い方が長生きできる」「コレステロールは低いより高いほうが良い」「肉を減らせ」「糖質を断って肉を食え」などなど、それぞれの人がそれぞれの考えを堂々と発表されると、一体、私たちは何を信じれば良いのかと思ってしまいます。しかし、これらの説は、すべて、ある面では正しく、ある面では正しくない。また、ある人には正しく、ある人には正しくない。また、ある状態では正しく、ある状態では正しくない。と考えるのが正しいと私は思っています。人がいうことをただ鵜呑みにするのではなく、自分にとって、どうすれば毎日が苦痛や病むことなく快適に過ごせるかを、自分の体に訊きながら、自分で見つけていくことが大切です。

健康をテーマにして、研究と実践を重ねてきて50年、今年72歳になった私は、筑波大学において健康と体力診断を20年近く継続して来ましたが、今年の活力年齢(身体組成、血圧、各種血液検査、肺機能、循環機能などの健康診断と各種体力テストを総合的に評価したもの)は、44歳という評価でした。ここ10数年、40歳代半ばの活力年齢が維持できている私の体験からは、野菜中心にできる限り摂取カロリーを減らすこと、無理をしない適度な運動と体の手入れ、ストレスを処理する工夫、などが健康の秘訣ではないかと感じています。

余命1年を宣告されたA君は、今や治癒が望めない僅かな延命のための抗癌治療を受けず、ガンを克服した人々の様々な助言のもとに、治癒を目指して挑戦を始めています。

ガンを克服した人々の調査から明らかになった、奇跡の自己(自然)治癒力を引き出す重要な要素は、「感情や意識の持ち方」と、生活習慣、特に「食事」であるとすべての経験者が述べています。

自ら「ガンに向かってまっしぐら」に走ってきた彼の生活を、全く正反対の方向に向きを変えさえすれば、「きっと治る」のではないかと私は感じています。

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