随意随想

大阪市の高齢者の状況と介護保険制度の改正 〜地域包括ケアシステムの構築に向けて〜

大阪市福祉局高齢者施策部介護保険課長 河野 圭司

【介護保険制度の改正】

  平成26年6月18日「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が可決されました。この法律は、持続可能な社会保障制度の確立を図るため、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進していこうとするものです。その中で介護保険法も改正されています。

 介護保険制度は2000年(平成12年)4月にスタートし15年が経過しようとしています。この間急速に高齢化が進展しており、65歳以上の第1号被保険者数はスタート時の平成12年4月では全国で2、165万人であったものが、平成25年4月には3、103万人と43%の増となっています。また、このうち介護保険サービスを利用するために要介護(要支援)の認定を受けておられる被保険者数は平成12年4月218万人から平成25年4月には564万人と約2・59倍の増加となっています。その一方で介護保険に要する費用も急激に増加し、平成12年に3・6兆円であった費用が平成26年度予算では10兆円にまで増加しています。今後も高齢化は進展し、団塊の世代が75歳を迎える平成37年には、65歳以上の高齢者は3、657万人(全人口の30・3%)、そのうち介護を必要とする状態になる人の割合が増加する75歳以上の高齢者は2、179万人(全人口の18・1%)になると推計されています。これはおよそ3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上の社会になることになります。また、高齢化の進展に合わせて、認知症の高齢者も増えていくことが予想されます。

 このような状況の中、今回の介護保険法の改正では、団塊の世代が75歳以上となる2025年(平成37年)をめどに、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築と介護保険制度の持続可能性の確保のための見直しが盛り込まれております。

【大阪市の高齢者の状況】

 では大阪市の高齢者の状況はどうでしょうか。本市の65歳以上の高齢者は平成12年度末の45・8万人から平成24度末62・3万人と12年で36%増加し、高齢化率も17・6%から23・3%に増加しています。大阪市全体の人口は平成25年以降減少傾向にあり団塊の世代が75歳を迎える平成37年では平成25年の266万人から約11万人減少し、約255万人と推計されています。しかしながら高齢者人口は、平成32年では69・3万人となり、平成37年はほぼ横ばいの68・3万人と推計されており、高齢化率は平成32年が26・5%、平成37年が26・7%と上昇しております。特に75歳以上の高齢者の方は平成24年では29・9万人であったのが、平成32年は36・5万人、平成37年は41万人と大幅な増加となっています。また、本市の高齢者世帯の特徴として、一人暮らしの高齢者の方の割合が高く、平成22の国勢調査では、高齢者の方がいる世帯のうち41・1%が一人暮らしの世帯となっており、全国平均の24・8%に比べると非常に高い割合となっています。

 次に要介護(要支援)の認定者数ですが、平成12年度末の5・2万人から平成24年度には14・3万人と12年間で約2・75倍となっています。また、要介護認定率(65歳以上被保険者に占める要介護認定者数の割合)は、平成12年の11・4%から平成24年は23・0%と約2・2倍の増加となっており、団塊の世代が75歳となる平成37年には認定者数が22・5万人、認定率は32・9%と推計しています。本市の要介護認定率は、全国平均を大幅に上回り、平成24年では全国の18・1%に比べ4・9ポイント高くなっています。この要因の一つとしては、本市では一人暮らし高齢者の割合が多く、家族の支えもなく何かと不安も多くなり、介護サービスを受けられる方が多くなることが考えられます。

【地域包括ケアシステムの構築に向けて】

 これまで介護保険制度の改正と大阪市の高齢者の状況については前述のとおりですが、これらの状況を踏まえ、今後、大阪市として高齢者施策をどのように進めていくのかということが重要となります。今後の高齢者施策の方向性については、現在策定中の第6期の「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」に盛り込むこととなりますが、その基本的な方向性について紹介したいと思います。

 基本方針としましては、平成37年(2025)に向け地域包括ケアシステムを構築すること、つまり、高齢者も他の世代とともに社会を支えていくという考え方に基づき、高齢者一人ひとりが住み慣れた地域で自立した生活を安心して営み、健康でいきいきと豊かに尊厳をもって暮らせる社会の実現を目指す。そのため、今後10年をかけて、医療・介護・予防・住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を目指していくこととしています。

 この地域包括ケアシステムを構築するため、今後、地域包括支援センターの運営の充実や認知症の方への支援、介護予防・健康づくりの取り組み、介護保険サービスの充実などの具体的な施策に取り組んでいくこととしています。大切なのは、個々の事業の充実もさることながら、いかにして地域での連携の力、関係性を高めていくかということが大事であると思っています。そのためにも、今後ますます地域福祉活動を活発にしていくかということが問われてくると思っています。

 最後に、これからの長寿社会に向けては、高齢者の方が地域社会の中で積極的に活動され、生きがいをもって生活できることがますます重要であり、老人クラブの果たす役割がますます大きくなってまいります。老人クラブ活動はこれまでもそれぞれの地域で様々な活動を展開され地域活動に貢献されてきましたが、引き続き地域づくりの新しい担い手として一層の取り組み、ご活躍を期待いたします。

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