随意随想

地域で消費者被害をなくすために

大阪市消費者センター所長 谷 陽一

 大阪市消費者センターでは、悪質商法の被害を受けた場合や消費生活上のさまざまなトラブルについて、市内にお住まいの方を対象に相談を受け付け、解決のための助言やあっせんを行っています。

 平成27年度に消費者センターで新たに受け付けた相談件数は2万3172件で、前年度の2万2996件より176件増加しており、契約当事者の年齢が把握できている相談のうち約3割が60歳以上の方です。

 前年度の相談内容で最も多いのは、出会い系サイトやアダルト情報サイトに関するもの(メールによる架空請求、利用料の不当請求)でした。また、大手通信事業者が光通信回線をプロバイダ等の事業者に卸売する、いわゆる光卸のトラブルに関する相談で、指定した日時に工事がされないなど、工事に関する苦情が多く寄せられました。70歳以上の方からの相談では、健康食品や新聞、ファンド型投資商品等に関する相談が他の年代と比べ多く寄せられました。

高齢者は狙われています

 悪質商法の手口としては、販売事業者は高齢者が持っている「お金」「健康」「孤独」といった不安に上手くつけこみ、「あなたのことを心配しています。」「気にかけています。」などと言って信頼関係を築こうとしますので、販売事業者の話を簡単に信用してしまうケースが多く見受けられます。

 また、高齢者は、消費者被害にあっても自分が悪いと誰にも相談しなかったり、被害にあっていること自体に気がつかない場合がありますので、周囲の方が被害に気づき、消費者センターへ相談するよう勧めていただくことが極めて重要になります。

エルちゃんの見守り講座

 大阪市では、悪質商法の手口やクーリング・オフなどについて知っていただくために、地域に出向き啓発講座(地域講座)を行っていますが、前年度より地域で高齢者の消費者被害を無くす取り組みをしていただくために「エルちゃんの見守り講座」を開催しています。この講座は、消費生活相談員が消費者被害事例の紹介だけでなく、消費者被害の防止ために周囲の方が消費者被害に気づくポイントや声かけの方法などについてお話しします。

 消費者被害の気づきのポイントは、いつもより元気がない、お金に困っている様子がある、最近見慣れない人がよく出入りしている、健康食品等の段ボールが不必要なほどたくさんあるなど様々ありますので、こうした様子の変化に周囲の方々が気づいた時には、声をかけて、消費者被害にあっているようであれば消費者センターに相談するよう勧めてください。

 高齢者の方は、自宅にいることが多く、訪問販売や電話勧誘販売のターゲットになりやすいことから、【見守り】変化に気づき↓【声かけ】声をかけて事実確認↓【つなぎ】消費者センターへ相談することを勧めることによって、消費者被害の未然防止や早期発見につながります。

消費者被害にあわないために

 近年、悪質商法の手口は様々で多様化していますが、被害にあわないためには、はっきりと「いりません。」「帰ってください。」と言い、「いいです。」「けっこうです。」と曖昧な返事をしないようにしてください。

 さらに、「今日だけ、今だけお得です。」と契約をせかす事業者には注意し、あわてて契約せず家族や周囲の人と相談したり、複数の事業者から見積もりを取るなどしてください。

 また、古着の買取りをうたう事業者は、本当は貴金属等の買取りを目的とすることが多く、安易に家の中に招き入れたりせず、できれば複数人で対応するようにしましょう。

 訪問販売や電話勧誘販売などで商品やサービスを契約した場合、一定期間であれば契約を無条件で解約できるクーリング・オフ制度があり、クーリング・オフ期間であれば、商品を使用していても、工事が完了していても、無条件で契約を解除できる場合があります。

 例年各区老人クラブにおいても、悪質商法の被害防止のため地域講座や見守り講座の開催を行っていただいておりますので、地域で講座が開催される際には、ぜひご参加いただきますようよろしくお願いいたします。

【トラブルで困った時は…】

 少しでも不安を感じた場合には、お金を支払う前に、まず、大阪市消費者センターの消費生活相談専用電話(6614―0999)へご相談ください。〔受付時間…午前10時〜午後5時(休み12/29〜1/3)〕

【各種講座について】

 地域団体等からの申し込みにより、老人福祉センター等へ無料で講師を派遣します。

「地域講座」

 悪質商法の手口やクーリング・オフ等対処法について、ビデオなどを用いて説明します。楽しく学べますので、ぜひともご活用ください。

(気軽にお問い合わせください)連絡先…大阪市消費者センター(電話6614―7522 FAX6614―7525)

「エルちゃんの見守り講座」

 地域でお互いに注意しあうために、悪質商法やクーリング・オフの仕方だけではなく、消費者被害にあっている人の周囲にいる人がその被害に気づくポイント・被害を確認するための方法などについて、わかりやすく説明します。

 「消費者被害」にあわないよう、ご家族、ご近所、お互いに声をかけあいましょう!

(見守り講座の問い合わせ・申込)連絡先…(公財)関西消費者協会6533―1173

随意随想 バックナンバー